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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet/桜庭 一樹¥1,470Amazon.co.jpとても小さい、とても寂れた町に住むあたし、山田なぎさ、十三歳。中二。十年前、天気予報にない大嵐が来て、漁師だったお父さんは乗っていた漁船が転覆して死んだ。海の底に沈んでしまった。兄の知彦は“貴族”だ。学校には行かず、働きもせず、お父さんの保険金とお母さんがパートで稼ぐ僅かなお金と生活保護金を使い尽くす。あたしは中学を卒業したら自衛隊に入る。お金がもらえて、生活費がかからなくて、学歴が低くても雇ってくれて、一人前に扱ってくれる。早く大人になれる。生活に打ち込む、本物の力。それが実弾。あまりに弱くてみじめで、闘う手段を持たなかったあたしは、実弾が欲しかった。そんな夏、あたしはあの少女に出会った。海野藻屑。自分を人魚だと言う不思議な転校生。彼女はたくさんの嘘をついた。それはまるで砂糖菓子でできた弾丸だった。彼女は周囲に向かって砂糖菓子の弾丸を撃ち続け、そうやって世界と戦おうとしていた。だって、子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲームで、生き残った子供だけが大人になれる。あたしたちはどこにも行く場所がなく、けれどどこかへ逃げたいと思っていた。一緒にどこまでも逃げて行きたかった。全ては生き残るために。生き残って行くために??。大人に良いように丸め込まれたり、暴力を受けたり。幸せでなくとも子供たちはそこから逃げ出す術もなく。そのためには早く大人になるしかなく、けれど大人になんてなりたくなくて。美しくも脆い“砂糖菓子の弾丸”で世界と戦おうとした少女達の、容赦なく過ぎ去る十三歳の一季を描く青春小説。十三歳の頃、「中学を卒業したら就職して、家も町も出よう」と、その頃とても仲の良かった友人と毎日話をしていた事がありました。私の家は母子家庭で、大手メーカーの下請工場で働く母の賃金はとても低く、大学に行きたいけれどきっと無理で、それならいっそ進学なんかしないで働いちゃった方が家も出て行けるし、別のもっと大きな町で自分で生活していけるようになる。自衛隊へ入る事も選択肢にありました。自衛隊だったら、お給料ももらえるし、住む所もあるし、国費で資格がとれます。暇さえあれば、卒業後の生活はどんな風にするかを話し合っていました。「一緒に行こう」と約束しました。その計画は現実にならなかったけれど、あの頃は本当に本気でそうしたいと思っていました。一刻も早く実弾(自立する力/生活を支える力)が欲しいと願うなぎさの気持ち、閉塞感はあの頃の私のそれと同じものだったのかな…と、読了後、しばしば考える事があります。天然ホタルも愛するミネラルウォーターが、エコパックの中に詰まってます。


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